[初回公開] 2006年10月31日
スマホから商品が簡単に購入できるようになってから店舗が無くても自宅でコストをかけずに商売することができ、主婦がハンドメイドの商品をネット販売したり、店舗を運営しながらネットでも販売するビジネス形態が通例化しているが、初心者がショッピングサイトを公開する方法を無料で利用できる EC-CUBE を使って紹介する。

このページの目次
1.ショッピングサイトとは
ショッピングサイトとは EC(Electronic Commerce)サイトとも呼ばれ電子商取引、すなわち実店舗ではなくインターネット上で商品を購入できるウェブサイトである。
amazon や楽天などインターネットショッピングモールに出店する他、自身でインターネット上に商品を掲載して販売することもできる。

簡単な EC サイトであれば販売する商品をウェブサイトで公開して、注文はメールやフォームでやり取りする手段が低コストで構築することができる。
しかし、利用者のスキルが上がっていることから個人情報の取り扱いといった「情報の安全性」やクレジットや電子マネーで簡単に支払える「利便性」の導入がショッピングサイトには求められている。
高機能な EC サイトになると過去の注文履歴をスマートフォンやパソコンのブラウザから確認して発注書として印刷することができたり、購入とともに在庫数が減って自動的に「品切れ」表示になるといった運営者と利用者の手間を減らす機能が搭載されている。
2.ショッピングサイト公開に必要なもの
ショッピングサイトをインターネット上で公開するためには事前に次のものが必要である。
サイトの場所となる「ウェブサーバ」や地名となる「ドメイン」は利用料金が必要となるため EC サイトの運営は全て無料で行うことは難しいが、費用対効果は大きい。
2-1.サイトの場所となるウェブサーバ
ウェブサーバとは EC サイトのプログラムや商品画像を設置するインターネット上の場所であり、実在する店舗でいうと土地に該当する。
日頃使っているパソコンをサーバにすることもできるが、利用者がインターネットでアクセスするためにはネットワークの設定の他、サーバが乗っ取られて改ざんや情報漏えいしないためにセキュリティの設定が必要になる。
初心者は有料のレンタルサーバ(別名:ホスティング)を利用するのが手軽で好ましく、安価なレンタルサーバであれば一年間で 3,000 円にも満たないサービスも存在しているのでお勧めである。
尚、EC サイトはプログラムが動作するため、CGI(Perl や PHP)が使えることと、データベース(MySQL や PostgreSQL)が利用できることが最低条件となるためレンタルサーバ契約時には仕様を確認する必要がある。
2-2.サイトを動かす EC サイトプログラム
EC サイトのプログラムはインターネットでダウンロードすることができ、無料で利用できる。
ダウンロードすると複数のファイルで構成されており、サーバに設置することで初めて動作する。
EC サイトの公開まで行かずとも簡単はホームページとしてインターネット上に商品の写真だけを表示し、注文は電話や電子メールでやり取りする方法も実在する。
そのため、初心者がお試しでショッピングサイトを公開するのであれば無料ブログを活用するのも一つの方法である。
2-3.サイトの住所となるドメイン
ドメインとはインターネットに設置したウェブサイトや EC サイトの住所であり、「https://○○○.□□□」の形式となる。
○○○の部分は自分で自由に命名することができ、□□□の部分は .jp や .com などが利用できる。
ただし、ドメインの命名取得は先着順なので自分が取りたいドメインは既に誰かが取得して利用している可能性がある。
レンタルサーバ(別名:ホスティング)を利用する場合は、そのレンタルサーバを運営する業者が用意するドメインを無料で利用することもできる。
ただし、レンタルサーバが提供するドメインは「http://契約者名.無料ドメイン名」という形になり、無料ドメイン名は同じレンタルサーバ利用者も利用しているため独自性を出すのであればドメインを取得する方がよい。
.com ドメインは一年間で 2,000 円ほど、.jp ドメインであれば 4,000 円ほどの利用料となっている。
2-4.通信を守る SSL 証明書
現在のスマホやパソコンからウェブサイトまでのインターネット通信は暗号化するのが一般的となっている。
インターネット通信を暗号化するためには SSL 証明書が必要となり、氏名や配送先の住所といった個人情報を入力する EC サイトでは導入するのが好ましい。
SSL 証明書が無い場合は購入者が入力した氏名や住所、クレジットカード番号が暗号化されずに通信されるため、サーバに入力内容が届くまでの通信経路上で情報漏洩する危険性があるとともに、最近のブラウザは SSL 証明書が無いと警告マークが表示されたり、インターネットショッピングに慣れた購入者であれば SSL 証明書が無いサイトでは購入を避ける傾向にあるのでぜひ導入したほうがよい。
2-5.インターネット上で販売する商品
EC サイトを運営する上で販売する商品が必要となる。
各メーカーが製造する商品を仕入れて販売するだけでなく、地場の加工食品や農作物、手作りのクラフト製品など自作できるものも商材となる。
そのため、身の回りのものや近所、知り合いが生産しているものなど、販売できるものが無いか広い視野で探すと販売できる商品が数多くあるのに気づく。
自作したイラストや陶芸、写真など芸術品を販売していることもあるが、中古販売する場合は中古品を取り扱う販売許可が必要となるので注意が必要である。
2-6.商品を届けるための配送手段
購入してもらった商品を購入者の手元に届けるためにはどのような配送手段を利用するか決める必要がある。
また、商材の販売価格とは別に配送料も加えることが多いため、どの配送業者を利用しどのような形態で配送するかで配送料が定まるので事前に定めて EC サイトで明記すると利用者も安心する。
一番安価な配送手段はメール便となり、数百円で配送が可能で梱包資材も安価に手に入る。
丁寧に配送するのであれば宅配便やゆうパックを利用して配送料は離島で無ければ 1,000 円以内で配送可能となる。
ただし、梱包するダンボールは耐久性と大きさを考慮し、破損を防ぐ緩衝材を用意するなど、配送一つに取ってみても準備が必要である。
2-7.代金を支払う決済手段
EC サイトの決済方法は「クレジットカード」か商品受け取り時に配達員に代金を支払う「代金引換」が多く、購入者に指定の銀行口座に代金を先に振り込んでもらう方法は最近ではあまり見かけない。
代金の回収をクレジット決裁会社など第三者機関で行ってもらうことで購入者に自身の指定口座へ送金してもらうよりも確実に代金回収でき、代金回収にかかる手間が飛躍的に解消する。
クレジットカードによって使える店舗と使えない店舗があるように、EC サイトにおいても利用できるクレジットカードが限られていたり、決済時のクレジットカード会社に支払う手数料が異なるのでよく調べる必要がある。
また、代金引換は配達業者が提供するサービスのため、商品発送時に代金引換の旨を伝えるだけで済むので非常に簡単な決済手段である。
3.EC-CUBE とは
ショッピングサイトのプログラムはインターネット上で無料でダウンロードすることができる。
その中で EC-CUBE があり、株式会社イーシーキューブが開発と提供している EC サイトのプログラムで利用規約を守れば無償で利用することができるオープンソースである。
EC-CUBE はサーバにインストールするとパソコンやスマートフォンのブラウザから商品を登録したり、発送待ちや過去の受注内容の閲覧、配送業者と支払い先の登録など店舗運営する上で必要な機能が一通り揃っている。
そのため初心者でもシステム会社に EC サイトの構築を依頼するよりも安価で最短でショップをオープンさせることができる。
また、拡張機能によりクレジット決済への対応や、納品書など明細を印刷するなど機能を増やすことで、より利便性を上げることもできる。
4.EC-CUBE のインストール手順
EC-CUBE をウェブサーバに設置してインストール手順が次の通りである。
- EC-CUBE をダウンロードする
無料で利用できる EC-CUBE を入手するにはまず EC-CUBE の公式サイトよりプログラム一式をダウンロードする。
プログラムは常に機能とセキュリティ向上のアップデートが行われており、現在の最新版はバージョン 4 となっている。 - データを保管するデータベースの作成
商品情報や発注状況など EC-CUBE が各種データの読み書きを行うにはサーバ内にデータを保管する器(データベース)が必要となる。
レンタルサーバ(別名:ホスティング)を利用している場合は、レンタルサーバの管理画面からキーボードとマウス操作だけで簡単にデータベースを作成することができる。
データベースは誰でも読み書きできないように、アクセスするためのユーザ名とパスワードが設定されているので EC サイト用に作成したデータベースの名称とアクセスに必要なユーザ名とパスワードはメモしておくとよい。 - EC-CUBE をウェブサーバへアップロード
ダウンロードした EC-CUBE のプログラムは多くのファイルで構成されているため zip 形式または tar 形式で圧縮されており、この圧縮ファイルを解凍し、FTP ソフトなどでウェブサーバへファイルをアップロードする。
尚、EC-CUBE のファイルは 1,000 個近くあるためアップロードには 10 分以上の時間を要す。 - EC-CUBE インストール画面の表示
EC-CUBE のファイルアップロードが完了すれば、設置した場所へブラウザでアクセスする。
アクセス先は「http://ドメイン/設置フォルダ/html/install/」となる。「/設置したパス/html/install/tempにユーザ書込み権限(777)を付与して下さい。」と表示されるので、指示通りアップロードに利用した FTP ソフトで権限(パーミッション)を 777 に変更し、再度、EC-CUBE の管理画面にアクセスする。
権限の変更は FTP ソフトにより操作方法が異なるが、多くの場合は変更したいファイルを右クリックすると 664 などと書かれた箇所があるので、その近辺にあるチェックボックスにチェックを入れるとよい。
次いで、管理画面上の「次へ進む」を押下する。
再度下記のような権限(パーミッション)変更するメッセージが表示された場合は、同じく FTP ソフトで変更する。
> ×:/設置したパス/data/install.inc(644) ユーザ書込み権限(666)を付与して下さい。 > ×:/設置したパス/html/user_data(755) ユーザ書込み権限(777)を付与して下さい。 > ×:/設置したパス/html/upload(755) ユーザ書込み権限(777)を付与して下さい。 > ×:/設置したパス/data/Smarty/templates_c(755) ユーザ書込み権限(777)を付与して下さい。 > ×:/設置したパス/data/update(755) ユーザ書込み権限(777)を付与して下さい。 > ×:/設置したパス/data/logs(755) ユーザ書込み権限(777)を付与して下さい。
インストールが進むと必要なファイルが自動的にコピーされ、全て”成功”と表示されれば次へ進む。
- 店舗名と運営者情報の登録
EC-CUBE のプログラムが動作するのが確認できれば、次に店舗名と運営者情報の登録する。
ここで登録した情報は後からでも変更可能である。店名と管理者のメールアドレスを入力する欄があるので入力する。
その他、サーバのパスの変更が可能だが、ここはそのままで次へ進む。 - データベースの設定
次に使用するデータベースの設定を入力する。DBの種類は、PostgreSQL を選択する。。
DBサーバは、”。
ポートは、空欄のまま。
DB名は、レンタルサーバの管理画面で作成したデータベース名を入力する。
DBユーザとDBパスワードもレンタルサーバの管理画面で設定したものか、予め用意されている情報を利用する。データベースにはテーブルなど自動作成されるが、それを行ってよいか確認画面が出る。
問題なければ次へ進み、その結果が画面に表示される。ここで次に進むが、「Parse error: syntax error, unexpected T_CONSTANT_ENCAPSED_STRING in /設置パス/data/install.inc on line 11」とエラーが出ることがある。
これはデータベースの設定時に DB サーバを”にしたことが原因で、設置した EC-CUBE のファイル(/設置ディレクトリ/data/install.php)の次の箇所を修正する。define (‘DB_SERVER’, ””);
↓
define (‘DB_SERVER’, ”);DB_SERVER の内容を修正したら、再度ブラウザで EC-CUBE にアクセスする。
インストールが完了した画面が出てくるのでこれで EC-CUBE のインストールは終了となる。
この画面に管理者画面へのリンクとログイン情報が出るので忘れないように書き留めたりブラウザのお気に入りに設定する。
EC-CUBE をインストールしたサーバにある「/設置パス/html/install/index.php」は悪意あるユーザがアクセスしてきた際に問題が生じるので FTP ソフトを使って消すようにする。
5.インストール後からショップ公開までに行うこと
EC-CUBE のインストールが完了すればインターネット上にショップが公開された状態となるが、まだ店舗名や商材などは仮登録のままとなっているので早急にショップとして体裁と整え、商材を登録する必要がある。
EC サイトとして公開するには最低限次の内容を EC-CUBE の管理画面から登録する。
- 店舗情報
- 販売する商品
- 配送手段
- 決済手段
6.ショップを公開して収益につなげる施策
EC サイトを設置して商材や店舗情報を登録してインターネット上で商品を購入できる状態になれば、後は利用者がサイトを訪れて購入したもらうのを待つだけである。
次の課題は「多くの人にサイトを訪れてもらうこと」と「商品を購入してもらうこと」の2点である。
前者の「多くの人にサイトを訪れてもらうこと」はせっかく公開した EC サイトに購入者が来なければ収益につながらないため、サイトのアクセス数を上げる施策が必要となる。
最近ではインターネットで調べる場合は Google や Yahoo など検索サイトを利用する人がほとんどのため、特定のキーワードで検索結果の上位に表示されるようにサイトの見直しや紹介文を見直すことになる。
検索結果の上位に表示されやすくする施策を SEO 対策と呼ばれている。
その他、X(旧:Twitter)や Facebook など SNS を活用してショップを紹介し、サイトへのアクセスを誘導する窓口を広げるとアクセス数の増加につながる。
また、後者の「商品を購入してもらうこと」はサイトに訪れる人が少なくても商品が魅力的であったり購入しやすい環境であれば収益につながりやすい。
紹介する商品は食材であればおいしそうで清潔感のある写真とし、食材以外であれば見栄えや利用シーンが想像しやすい写真を掲載するとよい。
商品の細かい説明も重要となり、サイズや質感など商材自体の情報の他、同梱されている内容物など情報が多いほど購入物の想像がしやすくなるため、購入者は安心して購入しやすくなる。
加えて、購入しやすい環境とは配送手段がメール便だと郵便受けから盗難にある可能性があり不安を感じる利用者も少なくないので宅配便など不在時でも人の手による受け渡しが可能であったり、販売者の身元がはっきりして信用を得てもらうなど購入時の不安を取り除く努力が必要である。
7.EC サイトの運営にかかる費用
EC サイトの運営にかかる費用は、月額で 3,000 円ほどで運営することができる。
この金額の内訳はレンタルサーバの利用料、決済システムの利用料、ドメインの利用料となっている。
そのため、販売する商品の仕入れ値と送料の他、EC サイトの管理費用と梱包する人件費を足していくとさらに運営費は膨らむが、運営を外注せずに自分で行うとスモールスタートしやすいとも言える。
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