[初回公開] 2018年10月29日
IoT に対応した家電や小物が出回りつつある今、電気機器を製造するメーカー以外にも学校など学習現場や食品や部品の製造現場でも活用が注目されている中、IoT の学習用端末として販売されている Raspberry Pi(ラズベリーパイ)の仕様と基本的な使い方について紹介する。

このページの目次
1.IoT とは
IoT(Internet of Things)とは、家電のような大きな物からカードより小さいタグなどにセンサーやカメラなどを取り付けてインターネット回線を介してデータ収集またはデータ共有することを指す。
例えば一般家庭にある冷蔵庫の内部にカメラを付けることで外出先のスマホからでも自宅の冷蔵庫の中身を確認して情報の共有を図ることができる。
これにより食材を余計に購入して余らせてしまったり、反対に買い忘れを防止して食材と時間の無駄を省くことができる。
また、洗面台の床にセンサーを取り付けて鏡の前に立つだけで体重や体脂肪を自動的に測定し、その結果を鏡に表示させることができる。
これにより意図的に体重計に乗るといった作業を省き、普段の生活の中でデータを収集・集計して健康管理に活かすことができる。
IoT は電子回路で構成されているため、主に電子機器を製造販売する企業で開発されている。
最近では小中学校でプログラムの授業が必須科目として取り入れられており、技術の授業で電子回路の学習に合わせて個人向けの IoT 学習キットとして Arduino(アルデュイーノ)や Raspberry Pi(ラズベリーパイ)がよく利用されている。
下記では Raspberry Pi(ラズベリーパイ)について紹介する。
2.Raspberry Pi とは
Raspberry Pi(ラズベリーパイ)はイタリアのラズベリーパイ財団によって開発・販売されている小型のコンピュータで、入出力装置の他、CPU やメモリだけでなく Windows のように OS も搭載されているので小さなパソコンとも呼ばれている。
Raspberry Pi の OS はデスクトップタイプもあり、本体には USB ポートと HDMI のポートがあるためマウスとキーボード、そしてディスプレイがあれば IoT としてではなくインターネット上のウェブサイトの閲覧やメールの送受信としても利用できる。
3.Raspberry Pi の仕様
Raspberry Pi には外付けのセンサーやカメラを取り付けて電力を共有して IoT 機器として利用するピンの他、Raspberry Pi を操作するマウスなどを接続する USB ポート、ディスプレイに状態を表示する HDMI などパソコンに近い機能が備わっている。

Arduino にはいくつかの種類が販売されており、下記は電子部品店で取り扱いが多い Raspberry Pi 3 model B の仕様である。
項目 | 内容 |
---|---|
CPU | Broadcom BCM2837 1.2GHz 64-bit quad-core ARMv8 Cortex-A53 |
メモリ | 1GB |
接続コネクター | USB2.0 Standard A コネクター x 4 有線LAN(RJ-45 x 1:IEEE802.3i(10BASE-T)、IEEE802.3u(100BASE-TX)) HDMI x 1(出力) microSDカードスロット x 1 3.5mmジャック(オーディオ/コンポジットビデオ出力) Camera interface (CSI) Display interface (DSI) 40ピンGPIO |
Bluetooth | Bluetooth®V4.1、Bluetooth Low Energy (BLE) |
無線LAN | IEEE802.11b/g/n(2.4GHz) |
電源定格 | DC 5V |
消費電流 | 1.3A |
外形寸法 | 約86(W) x 57(D) x 17(H) mm |
質量(本体のみ) | 約45g |
動作温度範囲 | 0~70℃ |
取得規格 | RoHS 指令準拠、電波法 工事設計認証 |
4.Raspberry Pi の構成
Raspberry Pi 3 model B の購入時はパソコンのようにケースが無く、電子基盤がむき出しの状態になっている。
ただし、Raspberry Pi 3 は販売台数が多いことからサードパーティー製の付属品が数多く販売されており、上図の Raspberry Pi の外観は専用のケースに入れた状態となっている。
尚、Raspberry Pi の小さな基盤の中に DC 電源の供給口やセンサーなどを取り付けるピンが収められており、ピンに接続する場合はケースの蓋を取り外して利用する。
4-1.Raspberry Pi の全体像
Raspberry Pi は小さな電子基板の中に入出力するポートや CPU、メモリなどが一つにまとまっており、各パーツが四方に分散して配置されている。

USB ポートは Type-A が 4 つあるため、マウスとキーボード以外にも USB メモリを挿すことができる。
また、Bluetooth と無線 LAN の機能があるので通信はワイヤレスで行うことが可能だが、有線の LAN ポートも搭載されている。
4-2.Raspberry Pi の裏側
Raspberry Pi がパソコンと大きく違うのはハードディスクや SSD といった大容量の記憶媒体が無い点だが、microSD カードを挿すスロットがあり、Raspberry Pi の OS はその microSD カードに入れることで起動する。

上図のように Raspberry Pi の裏側に microSD カードのスロットがあり、利用するセンサーの種類や用途に応じて Raspberry Pi が入った microSD を用意しておけば切り替えながら利用することができる。
5.Raspberry Pi の販売価格
Raspberry Pi は仕様が異なるいくつかの種類が販売されており、3,500 円から 6,500 円の幅で販売されている。
秋葉原を始め、地方でも電子部品を取り扱っている店舗で購入することができ、インターネットでも入手が可能である。
最近では Raspberry Pi 3 よりもスペックが高い後継となる Raspberry Pi 4 が販売されているが 3 に比べると高価なため、依然 Raspberry Pi 3 の人気は高い。

6.Raspberry Pi の基本的な使い方
Raspberry Pi の基本的な使い方としては、センサーなどを接続する端子に配線して電力を共有させるのが主な流れとなる。
センサー等の動作を制御するためには Raspberry Pi 本体に直接マウスやディスプレイを接続してプログラム言語 Python でプログラムするか、LAN ケーブルでネットワーク接続して同じネットワーク内にあるパソコンから遠隔でログインして操作する方法がある。
Raspberry Pi はデジタル信号の入出力にしか対応できておらず、アナログ信号の電子部品は利用できないため利用するセンサーには注意が必要である。
7.Raspberry Pi の総評
Raspberry Pi の総評としては、電子回路の学習やセンサー等を利用して実現したい IoT を模索する入門に最適なデバイスであるとともに、Linux 系の OS で稼働しているのでサーバの学習にも役立つ。
Raspberry Pi の利用を想定したセンサーや付属部品が数多く製造販売されていることから、学習だけでなく工場や事務所でも活用を見出すのに試験導入しやすいのが利点である。
7-1.Raspberry Pi の満足点
Raspberry Pi の満足点は、本来であれば電子部品を制御するマイコンを基盤にハンダ付けして土台を作らなければならないところ、電力供給を含めて全て揃っている点である。
かつ、OS 上で動作することからマウスやディスプレイを直接接続して操作できるのも手軽で良い。
さらに無線 LAN の機能があるので取り付けたセンサーから直接サーバに情報を送ることができるのも大きい。
また、Linux 系サーバと同様に使えるので SSH による遠隔操作にファイルサーバなどサーバとしての用途も持ちながら、デスクトップの画面では Firefox があるのでブラウジングできるとあり満足点は数えきれない。
7-2.Raspberry Pi の不満点
Raspberry Pi の不満点としては、パソコンと違いファンなど冷却装置がないため長時間の稼働に向いていない。
実際にデータ収集のため長時間炎天下に放置すると部品が溶ける事象も発生しているようなので利用時の環境と稼働時間には注意が必要である。
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